世界最高のクラシック

許光俊(2002)
「世界最高のクラシック」 光文社新書

720円+税
 久しぶりにクラシック音楽についての本を読んだ。クラシック音楽といっても、本書は指揮者をあれやこれやと批評した本だ。したがって取り上げた曲も指揮者が必要な曲ばかり、なかでも交響曲がほとんどだ。協奏曲があってもいいのではと思うが、独奏楽器の演奏家を論じたくないのだろうか、取り上げていない。

 指揮者を時代やジャンルごとに五つに分ける。第1章はフルトヴェングラーやトスカニーニなどの古典主義大指揮者たち、第2章はカール・ベームやカルロス・クライーバーなどの偽古典主義の指揮者たち、第3章はカラヤンに代表されるクラシック音楽の脱ローカルヨーロッパ/世界普遍音楽化を目指した指揮者たち、第4章は小澤征爾やレナード・バーンスタインなど、クラシック音楽のふるさとであり根源であるヨーロッパ文化以外の文化の中で育ったにもかかわらず著名な指揮者になった人たち、第5章はアーノンクールやフランス・ブリュッヘンに代表される個性や自己主張の豊かな現代の指揮者たち、である。
 
 フルトヴェングラーやトスカニーニを高く評価しているのは当たり前だが、嫌いなへそ曲がりも多いカラヤンを高く評価しているのはうれしい。いつだったか、日本の指揮者・オーケストラのコンサートでベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」を聞いた後、家に戻って同じ曲をカラヤン・ベルリンフィルのCDで聞いてその演奏の差に驚いたことがある。さすがカラヤン・ベルリンフィル!と再認識した。

 フランス・ブリュッヘンと彼の率いる18世紀オーケストラのベートーヴェン交響曲にいたく凝ったこともあった。もちろん今も好きだが、初めて聞いたときにはカラヤン・ベルリンフィルに慣れた耳には、おや!これは?と感じた。しかし、カラヤンのダイナミックレンジに富んだ演奏もよいが、こじんまりとしたオーケストラ編成の精緻な演奏もまた心地よい。

 フランス・ブリュッヘンと18世紀オーケストラの演奏は、モーツアルトやベートーヴェンの時代の古楽器を使用し、オーケストラ編成も当時と同じにして、その時代に行われたであろう演奏の再現というふれこみである。しかし、あの時代には今の18世紀オーケストラのように凄腕をそろえたオーケストラはウィーンにもなかったのではなかろうか。その意味でブリュッヘンたちの演奏は、18世紀的ではなくきわめて現代的な、現代でしか実現できない演奏なのではなかろうか。
2013年10月8日からの訪問者数
プロフィール

佐野書店 佐野悦三

最近の記事
ブログ内検索
カテゴリー
月別アーカイブ
リンク
RSSフィード