「撹乱と遷移の自然史」

“在庫切れ”
撹乱と遷移の自然史
重定南奈子・露崎史郎編著(2008)
「撹乱と遷移の自然史-「空き地」の植物生態学 」
 北海道大学出版会
定価3,150円(税込み)“在庫切れ”
A5版。6+258ページ。図版本文中に多数。ペーパーバック、ブックカバーつき。
 本書は撹乱とその後の植生の遷移について14名の研究者がそれぞれの研究視点から解説する。第1部は総論部分で生態系における撹乱とは何か、その調査法と理論を解説する。第2部以降は各論で、第2部火山噴火による撹乱、第3部火山性荒原の撹乱、第4部湿原の撹乱、第5部極地と砂漠の撹乱という五つの異なる環境の撹乱と、それをきっかけとする植生の遷移を解説する。
 菌類好きの佐野は、第3部第6章、奈良一秀「菌根菌による植生遷移促進機構」に注目する。本章では、菌根菌がいかに遷移初期の先駆木本植物の定着に重要な役割を果たしているかを、富士山寄生火山の宝永山をフィールドとした調査結果と菌根菌接種樹木の実験結果を元に説得力に満ちた解説をする。 
 本章以外に植物の遷移と共生する微生物との関係に触れた章は、第2部第5章上条隆志「火山島の一時遷移、三宅島における撹乱と遷移」(オオバヤシャブシと根粒菌;放線菌)だけである。「全植物の8~9割に菌根菌が共生する」(第6章)という状況からは、菌根菌の役割に触れずして植生の遷移を語ることはできないのではとも思う。
 巻末の引用文献・参考文献リストを見ると、外国語文献が圧倒的に多い。このことは日本ではこの分野の研究がまだまだ発展段階にあることを物語っているのではなかろうか。本書を読んで撹乱とそれをきっかけとする植生の遷移、さらにそれに重要な役割を果たす菌根菌の研究に興味を持つ方が増えることを祈らずにはいられない。
 菌根菌の種類・働きなどは、国立科学博物館編(2008)「菌類のふしぎ-形とはたらきの脅威の多様性」東海大学出版会にコンパクトにわかりやすく概説する。 
 「ひとつの場所で撹乱直後から極相までを観察するならば、それは自分の一生をかけても観察できるものではない。逆に言えば、日本では大学を含めた研究機関において、このような研究を行うのは得策とはいえない。それでもなおかつ、それを研究したいという奇特な人間集団が作り上げた書が本書であり、著者14名の研究歴を合計すれば1世紀を越える成果が濃縮されている」(本書「はじめに」から引用)
2013年10月8日からの訪問者数
プロフィール

佐野書店 佐野悦三

最近の記事
ブログ内検索
カテゴリー
月別アーカイブ
リンク
RSSフィード