2009-11

INAXブックレット「考えるキノコ」

INAXギャラリー大阪で巡回企画展「考えるキノコ -摩訶不思議ワールド-」が開催中だ。2009年2月19日木まで(以降、名古屋・東京のINAXギャラリーで順次開催)。入場無料。本書はこの企画展に併せて出版されたビジュアルな小冊子だ。
考えるキノコ
INAX BOOKLET 「考えるきのこ -摩訶不思議ワールド-」 2008、INAX出版
価格1,575円(税込み、送料別) 送料80円(メール便) 納期2週間(在庫)
ご注文は佐野書店(e-mail: e_sano@d2.dion.ne.jp )まで。
日本語。21.1x20.6cm。72ページ。ほとんどが原色図版ページ。ペーパーバック。

 タイル、トイレ、ユニットバスなどのメーカー、 (株)INAX (本社 愛知県常滑市)*は文化活動にも力を入れている。大阪、名古屋、東京、計3ヶ所のINAXギャラリーでの展示、INAX BOOKLETほかの出版、創業の地、常滑でのミュージアム、などの活動である。
 今回、INAXギャラリーでは「きのこ」をテーマとして取り上げ、12月11日に始まったギャラリー大阪を皮切りに、ギャラリー名古屋、東京京橋のギャラリー1の計3ヶ所で巡回展「考えるきのこ -摩訶不思議ワールド-」を来年8月8日までの8ヶ月間にわたり順次、開催する。

 本書はこの企画展に併せて出版されたビジュアルな小冊子だ。小冊子ながら見応え・読み応えがある。記事の著者は、大舘一夫(「都会のキノコ」著者)、佐久間大輔(大阪市立博物館)、吹春俊光(千葉県立中央博物館)、飯沢耕太郎(「世界のキノコ切手」著者)などだ。 
 4-16ページの記事「世界のビジュアルキノコ狩り」(佐久間大輔氏解説)の写真はカラフルでしかもすばらしく美しい。
 25-48ページは吹春俊光氏の「近・現代博物誌に描かれたキノコ」と題する18・9世紀のキノコ図譜の解説だ。菌類学の創始者といわれるイタリア、フィレンツェの植物学者ピエール・アントニオ・ミケリの「Nova Plantarum Genera」(植物の新しい属)に始まる7点の貴重な外国の図譜と坂本浩然「菌譜」など4点の日本の図譜をたくさんの原色写真を添え解説する。
 さらに同氏は続く49-51ページで「キノコ研究の古今東西」と題し、ギリシャ時代から今日にいたる世界のキノコ研究史を概観し、日本の在野の研究者の貢献に触れる。

 52-56ページは菌類に憑かれた二人、科学映画監督、樋口源一郎(1906-2006)と青木図版の製作者、青木実(1924-)の話だ。
 樋口氏に佐野が初めてお会いしたのははるか十幾年以上前になるだろうか、日本変形菌研究会の庚申山(栃木県)合宿の時だ。そのときすでに80歳を過ぎておられた樋口氏は若きキャメラマン(といっても私より年上だが)、石井薫久(いしいしげひさ)氏(1945-2008)と二人で参加された。真正粘菌や細胞性粘菌に対する思いを青年のごとく熱く語られ、撮影時にはカメラを構える石井氏を厳しく指図されていた。80歳を越えるお年寄りには到底見えなかった。
 このとき撮影された映像を含む科学映画「真正粘菌の世界」は、1997年第38回科学技術映像祭で科学技術庁長官賞を受賞した。これに先立つ科学映画「細胞性粘菌の行動と分化」では、1992年第33回科学技術映像祭で内閣総理大臣賞を受賞している。
 この2作以降、樋口氏は菌類に憑りつかれたごとくキャメラマン石井氏とコンビで1999年「菌と植物の共生」、2001年「きのこの世界」と菌類をテーマとする科学映画を作り続けられた。樋口氏は2006年99歳で亡くなられ、その2年後の今年8月、キャメラマン石井氏も亡くなられた。

 記事はさらに佐久間大輔氏「キノコに向き合う」、飯沢耕太郎氏「この奇なきのこ」と続く。
 最後のページはマツタケ山でマツタケのすき焼きを楽しむ家族の写真だ。服装や髪型から大正か昭和の初めだろうか。そのころマツタケは珍しくなかった。佐野書店の事務所がある兵庫県相生市の隣、赤穂市の山、私がキノコ観察によく出かけるこの山もかつてはマツタケ山であったと、地元の方から聞いた。私の亡き父のアルバムにも、マツタケ狩りのあと大勢ですき焼き鍋を囲む父の若き日の写真がある。 

 巡回企画展「考えるキノコ -摩訶不思議ワールド-」は以降、名古屋2009 年3 月6 日(金)から5 月21 日(木)まで於ギャラリー名古屋、東京京橋2009 年6 月4 日(木)から8 月8 日(土)まで於INAXギャラリー1で開催。詳細は2008年11月27日佐野書店ブログ参照

*(株)INAXの概要: 右の「全文を表示」をクリック願います。 (資料:INAX会社情報など):
 ●非上場、資本金450億円、従業員(子会社含む)15.6千人、連結売上(H20年3月期)3千2百億円。
 ●製品:タイル・建材、トイレなどの衛生機器、ユニットバスなど浴室・洗面・キッチン機器など。
 ●TOTOに次ぐ業界第2位のメーカー。1924年(大正13年)森村グループのタイル・陶管メーカー、伊奈製陶(株)として設立、1985年(昭和60年)(株)INAXに社名変更、2001年トステム(株)と経営統合し(株)INAX・トステムホールディングス(現(株)住生活グループ)傘下の事業会社となる。
 *森村グループ:かつての森村財閥。(株)ノリタケカンパニーリミテドが中核。TOTO、日本碍子、日本特殊陶業(スパークプラグ)、大蔵陶園(高級陶磁器)、森村商事などがある。INAXはトステムとの経営統合によりグループを離れた。森村財閥の創設者森村市左衛門は学校法人森村学園(横浜市緑区、幼稚園、初等部、中等部・高等部)の創設者でもある。

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