新しい植物分類学Ⅰ

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日本植物分類学会監修、戸部博・田村実編著(2012)
「新しい植物分類学Ⅰ」
 講談社
価格 2,940円(税込み)、14.8x21cm、256ページ、ペーパーバック、カバー付
新「植物分類学会」発足10周年の記念出版。(新「植物分類学会」は、植物分類学の一層のパワーアップを期待して、旧「植物分類学会」と「植物分類地理学会」の二つの学会を統合し発足した)

 第一線で活躍する研究者が自らの研究成果を中心に、最新の情報を平易に解説する。
 全てのテーマが興味深いが、中でも注目は、「サトイモ科研究の流れ」(邑田仁)と「ラン科」(遊川和久)だ。

 前者は、新知見を伴う形態分類を極めつつあった著者が、分子系統解析の知見をも取り入れ、形態形質による分類と分子系統解析による成果とを総合した研究成果を着々とあげていることに感銘する。

 後者は、2万6千種を越える植物界最大の科であることからも分かるとおり、すさまじいほどの多様化を示すラン科植物のその多様化を可能にした原因と過程を、シュンラン属の遺伝子分析から得られる種の進化とそれらの菌根共生菌の種類の変化とを関連付けることにより明らかにし、さらに植物多様化に果たす菌類やバクテリアの役割にまで考えを及ぼす。植物分類学から見た菌類の視点が新鮮だ。

 本書を読むと、いわゆる高等植物の分類学は、従来考えられていたような完成された学問ではなく、まだまだ発展途上であることが分る。菌類やきのこの分類学も若い研究者が分子系統解析で得られた知見をもとに新しい成果を続々と発表している。菌類分類学も、植物分類学に劣らず日進月歩で進展している。これらの成果を本書を真似て一般向けにやさしく解説した本を、日本菌学会などが音頭をとり、出版してほしいと希望するのは私だけだろうか。

 なお、この夏に出版予定のコケ・シダ・裸子植物を扱った「Ⅱ」が待ち遠しい。  
 
目次:
はじめに
被子植物
 (新しい分類体系と新たな課題)
ウマノスズクサ属(ウマノスズクサ科)
  (属の系統分類と近縁群の種分化からみる多様性)
クスノキ科
  (その混乱した分類と、分子系統やクチクラ形質を使いもつれた糸をほどく試み)
モクレン科 (ヒメタイサンボクの種内分類の解決に向けて)
マツモ属(マツモ科)
  (取り残された植物群、花の発生過程からその謎に迫る)
日本産トリカブト属(キンポウゲ科)
   (レイジンソウ類とトリカブト類 野外調査で見えてきたトリカブト属の多様性) 
ヤナギ属(ヤナギ科)
   (形態による分類が難しい植物群、分子系統解析はどの説を支持するのか)
カワゴケソウ科 (極限環境に生きる植物の植物相から形態進化まで)
モウセンゴケ科
   (食虫植物はどのような遺伝子がどう変わることによって進化したのか)
単子葉植物 (分子系統とそれに基づく分類)
サトイモ科研究の流れ (テンナンショウ属からリュウキュウハンゲ属へ)
トチカガミ科 (水生植物の多様な送粉機構とその進化)
ヒナノシャクジョウ科 (謎に満ちた腐生植物)
タコノキ科
   (アダンとは何物か、南の島の広域分布種の来し方を知るには?)
日本産シライトソウ属(シュロソウ科) (種分化と多様性、性表現の進化を探る)
ショウジョウバカマ属(シュロソウ科)
   (形態・生態・DNAの情報から見えてくる植物群の姿と分類)
ラン科 (共生菌がもたらした多様化)
クモキリソウ属(ラン科)
   (植物の“木登り”進化と見逃されていた形質と種)
付録 APG3分類体系
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