ホンシメジLyophyllum shimeji は周北要素菌類?

 日本菌学会誌Mycoscience Vol.52, No.5, 20111年9月号が来た。
 その中の「Lyophyllum shimeji, a species associated with lichen pine forest in northern Fennoscandia」というタイトルの論文が目に入った。

 論文の内容はそれだけではないのだが、佐野は、“北欧で採集されたLyophyllum shimejiホンシメジと日本のホンシメジの遺伝子分析(ITSとLSUの二つの領域)結果を検討したところ、同一種という結論になった”いう論旨に目を奪われた。記憶があいまいだが、以前にマツタケについても同じような結果が出ていたことを思い出す。

 ホンシメジもマツタケも共生する植物への依存度が高い外生菌根菌である。北極圏が暖かかったころに北極周辺に分布し、その後、繰り返された寒冷化によってヨーロッパ、アジア、北米と分布が分散化した植物を周北(極)(要素)植物(群)と呼ぶようだ。マツ科、ヤナギ科、ブナ科などの植物がそれに含まれる。周北要素植物群では互いに遠く離れたヨーロッパ・北米・アジアに類似種や同一種が分布する。当然、周北植物群に共生する菌根菌でも同様なことが考えられる。(それら周北要素植物群に共生する菌根菌は、周北要素菌類群と呼んでもよさそうだ)

 したがって、周北植物群に共生する菌根菌では、色や形がヨーロッパや北米産のものと少し違っているという理由だけで新種と考えることには慎重でありたい。もっとも、中国大陸西南部に分布中心を持つ中国大陸要素植物(群)という言葉もあるようなので、簡単ではなさそうだが。

追記:著者はスウエーデン、ゴーテンブルグ大学の研究者だ。マツタケのときもそうであったが、今回も「北欧産のホンシメジは日本産と同一種だから、日本の皆さん、北欧産ホンシメジをたくさん輸入して食べてくださいね」、というメッセージが透けて見えるのは穿ちすぎだろうか。もっとも、匂いマツタケ・味シメジと称される優れた食用きのこであるホンシメジが、たとえ輸入品であったとしても、手ごろな価格で食べられるようになれば、大変うれしいことだ。
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